Backpackの凡人



人間五十年、
下天のうちをくらぶれば、
夢幻のごとくなり。

ひとたび生をうけ、
滅せぬもののあるべきや。


2004年というのは凡人のBackpack人生の出発点です。そのきっかけはマッキンリー山を見よう!これだけでした。単純なんです。でも、なんでもそうだと思うのですが、人というのは何か明確に示された目標がなければ動き出せないことがあるものです。このMacKenley山を見よう、という、それだけの想いをもって、今、凡人は実際にDenali国立公園にいます。Denali=偉大なるもの、はMacKenley山のことを指します。Wonder Lakeという場所があるのですが、そこは公園内で簡単にAccess出来る場所のうちMacKenley山に一番近い場所です。凡人はその場所にテントを設営しBase Camp地としていました。しかし、このDenali訪問時には北部フェアバンクス周辺で起こっていた火事からの煙の為に大変見通しの悪い状況で、ことにWonder Lake方面は風向きが悪く、全くMacKenleyは見えないであろう、ということが強く予想されました。残念ですが(当初期待していた)Wonder Lakeの自分のテントから、寝転んでマッキンリー山を眺める、などということは期待できなさそうだったのです。もともと、それまでの3日間のデナリの滞在で以下のことが分かっていました。
@朝方、大量の朝露が降りる
A朝露は煙をcaptureする。
Bその為、朝方、景色は一番見通しが利く
朝が一番のチャンスなのです。この日、BasecampとしたWonder Lakeの我がキャンプサイトから朝一番のCamper's Busを使ってデナリ内を移動しました。朝早く、5時頃から行動開始した甲斐があって

見えたのです。
連なるSnow capped mountainsが!
中でも一番高いこの山が夢にみていたMt. MacKenleyです♪!

やりました。Camper's Busで移動している際中に見え始めたのです。朝6時半くらいのことでした。山全体が完全には見えてしまいませんでしたが、頂上辺りから煙の中に浮かび上がるように徐々に登場したんです。。煙で曇った麓は霞がかった感じで山の裾は見えなかったのですが、、その霞みがかった山の中腹から上の部分は天に浮かんでいるような感じで見えました。

丁度、朝日があがって間もない頃の時間で、朝日に少し赤く染まりながら、山は少しずつその姿をハッキリと見せ始めました。バスに乗っていた皆が最初は

『?』

くらいの感じだったのですが、日が上がるにつれて、山がその姿を天の上に浮かび上がらせ始め、

『Mountain ! 』
『Awful...』
『Beautiful...』

などと、連発していました。本当に本当に綺麗でした。
天に浮かぶ山

全くそんな印象の登場でした。ちなみに写真の一番右側の山がそうです。
Eilson Visitor Centerでバスを降りてMacKenleyに迫ろうと考えました。
目の前の山、その右手にマッキンリー山を含めた雪を抱く山々があります。その山々の前には広大なツンドラが広がっています。ツンドラには山から流れでる川があってそこを東西に流れています。この目の前の山を迂回すればMacKenley山はより間近に見ることが出来るはずだと考えました。

『よし、この山の裏側に回りこもう!
マッキンリー山を、そこで独り占めだ♪』
歩き始めたツンドラは初秋の色合いを見せていました。ツンドラの広大な大地には歩くための道などなく、何処を歩く自由も自分のものでした。

これはデナリに豊富な天然ブルーベリーです。
朝、お腹がへっていたので道々沢山みられたブルーベリーをちぎって食べながら歩きました。おいしかった、ブルーベリー。店頭に並ぶ奴より、ここデナリのブルーベリーは小粒で味は淡白です。小さなツンドラの花もあちこちに咲いていました。
歩きながら、途中、ツンドラの大地に身を伸ばして立っている小さな可愛らしい何かがいるな?と思っていたところ、それは
北極地リスでした。デナリでは何処でも見かける奴ですが、このEilson周辺には特に沢山います。2本足で立って、思いっきり背伸びしている小さなリスがいたら、それは間違いなく北極地リスです。この身を伸ばして立ち上がる彼らの姿はデナリ固有の思い出の光景です。
まず、Eilson、自分のいる丘の側から、マッキンリー他、雪山を目の前にしながら、山の右手のほうに回りこみます。そして、その手前に広がった河原を経由してツンドラ一帯を選んで歩き、マッキンリー山に迫ろうと、そう考えたのです。コース取りが悪かったのか、目の前に広がった
潅木を切り分けることとなりました。最初は潅木を切り抜けることに少々抵抗ありましたが

バキバキ、メキメキ...

これが慣れると妙に楽しい。他のアメリカの国立公園や、国有林ではこういう行為は許されていません。こういう滅茶苦茶なことを野放しにOKとしているのは、ここデナリの最大の特徴です。いわば、これこそデナリの味。
空に浮かぶ天空の山、マッキンリーを遠くに眺めながら思いもひとしおでした。
8月、アラスカの夏の終わり、秋になり行くこの季節。時間は早朝、気温は5度くらい。気持ちよかった。潅木掻き分けながら、汗だくになるのですが、5度の気温が本当に心地よかった...

凡人の見た最初で最後のマッキンリー山の姿です。
やってることは、原始人レベルの徘徊に近いことだと、自分でも感じていました。

『こんな経験、何度もは味わえないゾ。』

と、ワクワクしながらやっていました。マッキンリー山眺めながら、声出して歌いながら潅木を掻き分けていました。笑。楽しくて、幸せで仕方なかった...すべての些末ごとなんか自分の中から吹っ飛んでしまいました。
夏が過ぎ 風あざみ

だれのあこがれにさまよう

青空に残された 私の心は夏模様



夢が覚め 夜の中

長い冬が窓を閉じて

呼びかけたままで 夢はつまり

思い出のあとさき



夏祭り 宵かがり

胸のたかなりに合わせて

八月は夢花火 私の心は夏模様



目がさめて 夢のあと

長い影が夜にのびて 星屑の空へ

夢はつまり 思い出のあとさき



夏が過ぎ 風あざみ

だれのあこがれに さまよう

八月は夢花火 私の心は夏模様


その時、歌いました。井上陽水『少年時代』
潅木を抜けて河原に出ると、杖になりそうな程良い長さのが落ちていたのでそれを拾って旅の供にもって行きました。
だだっ広い河原でした。スケールがデッカイんです。果てしなく河原とツンドラが広がり、その果てに、山々がある、そしてその上に更に空に浮かぶマッキンリーがあるんです。本当に雄大な光景でした。
その河原の左手には先でも紹介した迂回しようと思った山がそびえていました。
出発したEilson Visitor Centerはこの辺りまでは何とか豆粒大に見えていました。(この後、山の裏側に入って全く見えなくなりました。)
凡人、アラスカの大地を行く〜〜
河原にはとても綺麗な川がチョロチョロと流れていました。本来もっと水量豊かで、徒渉するには経験を要する筈の場所だったのですが、この年はとても乾燥していて雨量が記録的に少なく、その意味では徒渉の危険は少なかったのはラッキーでした。
この河原の徒渉も強い印象を残してます。

ジャブジャブ、ジャブジャブ

あの透き通った水
河原を越えると、そのむこうではツンドラの大地が白く白く燃えていました。果てしなく広がる美しい、幻想的な光景でした。何処も、此処も本当に素晴らしい...
また、ある場所では乾ききった場所も広がり
更に別の場所では熊の足跡残す砂場もありました。

『こいつは小さいな、ブラックベアかな?』

デナリ国立公園。Bear countryです。この時期、彼らはブルーベリーを食べるのに忙しく、人にかまっている暇はないということは分かってましたが、出会いたくはないですね。一騎打ちすれば、何がどう間違っても勝ち目がない。
と、こんな感じでいろいろなものを見て徘徊して回るのは
楽しかった♪
この汚い濁流もアラスカの典型的光景で、この先上流に氷河があることの証拠です。この手の汚い川はアラスカの彼方此方で見かけます。アラスカ特有の光景のひとつです。
ようやく山を回ってきたのですが...その向こうにも山がそびえていました...気がつけば、.この山に隠れてMacKenley山は見えなくなってしまいました。

『MacKenley見えないのは残念だけど、この山はこの山で凄いな...』

(実際には13枚上のマッキンリーの姿が凡人の見た最初で最後のマッキンリー山の姿でした。この後、マッキンリー山は煙に隠れてしまい、その姿を現わすことは2度とありませんでした。この意味で、この日の朝、わずか2時間程だけでしたが、その姿を見れたのは本当に幸運でした。)
ちなみに道なき道のお供はコイツらです。

・方位磁石:これなきゃ、話になりません
・ベアスプレー:自分のことは自分で守ろう
・ヘッドランプ:帰りが遅くなった時はコレよ
・昼飯:やっぱし、日本人おにぎりでしょ

他に、地図、雨具とチリ紙は最低限必要ですね。何をやる際にも
ちなみに水は近くの川の奴で十分綺麗でした。本当に透き通った水です。昼間、少し暖かくなってきたので、この水の冷たさが気持ちよくてたまりませんでした。
それまで、かなり歩いたので結構、汗をかいていました。それだけにこの水の冷たさが余計に気持ちよくて堪らずに、変な魅力に駆られてしまいました。

『キョロ、キョロ、キョロ(辺り見回している)』

どう考えても、人は周囲には全くいません。Eilsonからずーっと歩いてきましたから熊、カリブー、ムース、ライチョウとかはいても、人なんかいるはずありません。

『よっしゃ、やったろう!』

凡人、石を川に投げ込み小さな堰を作り、その先に小さな水溜りを作りました。写真ではとても小さく見えてしまいますが幅2m、深さ1mくらいの結構大きな水溜りです。それにしても、とても綺麗な水です。

『いー感じ、いー感じ♪』
と、この大自然の中で天然のひとっ風呂を楽しみました。笑。本当に気持ちよかった...

『サイコーやね。人生、最初で最後の経験だ。ワッハッハ。』
マッキンリーを目に出来たのはほんの一瞬でした。でも、この日、凡人は

『ああ、俺もBackpackerになったなァ〜』

とシミジミと感じてました。

2004年、デナリ、そこで凡人は自分の世界を大きく広げることができました。

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