Backpackの凡人




キナイ・フィヨルド そこは氷が支配する世界です。

アラスカには5000を超える氷河があることで知られています。地球上で最も氷河の密集した場所です。

アンカレジから数時間南にいくとキナイ半島というとこに至ります。キナイ半島はアラスカの中でもことに氷河の密集した場所として知られていてキナイ・フィヨルドという美しい地形を形作っています。キナイフィヨルドは国立公園になっています。今回はセワードという大変美しい町のチョット北にある国立公園内のキャンプ場に泊まりました。驚いたことに、このキャンプ場は早い者勝ちでしかも無料です。(ちなみにセワードという町は凡人がコレまでで地球上で目にした最も好きな町です。)
キャンプ場からちょいと先にすすむと
公園内には20分ほどの簡単なトレイルを歩いて
Exit氷河という奴を簡単に間近に見ることができます。この氷河は地上に流れ出している氷河なのです。超巨大で氷河の幅は1キロ以上あります。(ちなみに世界一大きい奴は幅10キロを軽く超えています。)
目の前に見えている氷河の裂け目、クレバスも写真にすると小さく見えますが、高さ10m以上は軽くあって見あげるほどのものです。

20分の散歩、あまりにも簡単に見れるので凡人には刺激不足。翌朝、朝一番でよりDeepな世界に入っていこうと決めました。
これが翌朝の風景です。とても深い霧でした。途中道に迷わなければいいが... そう思って出発しました。朝6時です。
霧なのか?と思っていましたが、どうも雲の中にいるようだということが後で分かりました。このセワードの辺りの雲は妙に低いところに垂れ込めていました。自分はこんな世界(平地で雲の中にいるような世界)はここがはじめての経験でした。
真っ直ぐ行くと昨日見たExit氷河なのですが、今回はそこから右に曲がって山の上に上っていきます。氷河の出所、氷原をこの目で見て、そこに下り立とう!と思ったのです。目的の場所はHarding氷原といいます。でも問題はこの深い雲と片道6キロ少々(往復12キロ)という距離です。しかも氷河は山を下ってきていますのでそこを登っていく形になります。早朝から出発したとはいえ夕方までに戻ってこれるかどうか問題です。が、所詮突貫工事の旅行。迷いなど微塵もなく出発しました。
トレイルの出発直後は森の中をかなりの急勾配で登っていくトレイルを歩くことになります。この山麓付近の森の中を歩いている際にで2匹の小さな熊に遭遇したのですが、ベアスプレー構える前に(というかカメラ構える前に)逃げられてしまいました。この辺は熊とムースが多くて結構危険なのです。しかも誰よりも早く朝一番に出発していますから熊、ムースに遭遇する可能性はきわめて高いのです。でも、むしろこの時はアラスカ旅行も終盤に向かっていましたのでバッタリでもいいので会いたい、そして一発写真にでも収めたいとくらい思っていました。
山をドンドン登ると下界に自分が抜け出してきた雲が山麓に低く垂れ込めていました。自分はもう雲の上にいます。チョットしか歩いていないのに...と、なんだか妙な気持ちでした。
物凄い急勾配で凡人はハアハアと息を切らせてそれでも先に急ぎました。途中、小川等を目にしながら。
やがて森を抜けると今度は低い草がモシャモシャと生い茂った一帯が延々と続きました。
この辺り、草花に満ちていて結構いい感じのとこでしたよ。
主に、緑に映える赤と黄色のオンパレードでした。
その向こうにはこの眺めです。Exit氷河の上流の方です。無数のクレバスが口をあけています。白く蒼いその姿が怖いくらいの美しさでした。
この辺、沢山の氷河があります。氷河とはいえ今は夏、当然気温は10度以上はあります。当然、この巨大な氷河も徐々にとけていくわけでそこから物凄い勢いで川が流れてたりしました。小さく見えますがこの川巨大でゴウゴウと物凄い音を立てているのが耳に響きました。
かなり登ってくると下界の雲が消え始め
Exit氷河がその全貌を現しました
目の前のこのExit氷河幅1キロくらいあるのになんだか今の自分には小さく見えてしまうから不思議です。氷河の先には例によって氷河から流れ出す濁流が幾筋もの浅い流れをなしています。どこの氷河もこんな感じの川を作っているのは不思議な感じです。この手の浅い、無数の筋をなす、泥だらけで汚い川は典型的”アラスカの川”というイメージです。
と、更に進むと気温は差がり、ツンドラの世界に突入です。
ツンドラはデナリで広大に広がっていますし、アラスカでは最も典型的景色です。
ここのツンドラは少しだけ感じよく紅葉してました。
と、山の上のほう目指してドンドン歩きます。12キロ少々の行程です。休んでなんかいられません。
ツンドラの中でもファイアーウィードはことのほか紅くて
美しかった...

ファイアーウィードの燃える秋はアラスカ他、北の大地ではどこででもこの時期見かける光景だと聞いています。
息をゼイゼイ言わせながら、それでも休まず突き進むと、Exit氷河の上流の辺りにちかづいていきました。当たり前ですが、氷河の上流は普通の水の川のように泉とか、湧き水のように小さな点から出発している訳ではありません。氷河の上流はいわゆる氷の巨大な集積、氷の大地です。Ice Field =氷原なのです。まだ、その全貌は見えませんが、どうも大変な美しさのような感じです。
途中のトレイルの岩もいかにも氷河によって削られてきた、そんな足場が続きました。
ツンドラと荒々しい大地、これこそがアラスカですヨ。

マーモットです。大きさ50cmくらい。
モコモコしていてお尻フリフリしなが大地を歩き回ってます。
マーモットは自分が経験的に知る限り最も寒く高度の高い
場所にいる生物ではないでしょうか?でなければこんなに
人畜無害な優しい生物は生存競争を生き抜けないと思い
ます。彼らは他の動物の生きていけない寒い場所を選ぶ
ことで生き抜いてきた筈です。

マウンテンゴートです。こいつ、人を知らないみたいで凡人
などには気もくれず2−3m程の目前を通り過ぎていきまし
た。あまりに近くて凡人の方が驚かされてしまいました。
彼らは急勾配を選ぶことで生存競争を生き抜いてきた筈
です。彼らはアラスカではとてもよく見かけましたが、ほぼ
例外なくとんでもない急勾配のとこにだけ住んでいます。
と、そのツンドラの大地に生命の営みを目にしながら、
先にすすめば、
やがて
それまで台地を支配していたツンドラや動物の姿もなくなり、
むき出しの大地が辺りを完全に支配しました。何にもなくなりました。実に荒涼としています。
地球という惑星に出会った...

荒々しい寒々としたこういう景色を見ながら、そんな感じがしたものです。
ここが月面といわれればそう思ってしまいそうな、そんな世界です。
何故そう感じるのか?
これまでの地球の歴史を考えれば、氷河というのは地球の歴史そのものであったはずです。人類は誕生してまだ1万年少々の歴史しかありません。しかし、氷河はそれ以前に100万年に渡って”氷河期”という形で永らく地球を統治してきたのです。いや、地球そのものが当時は氷河の塊だったんです。そういう歴史を人間のDNAもどこかで知っているのかもしれません。地球に出会ったと感じるのは自分のDNAのどっかに眠る記憶の一表現形ではなかろうか?とボンヤリ考えていました。

入り口にHarding Ice Field
シェルターと書かれてます。
ブリザード等の天気の急変
の際に緊急避難をする為の
場所です。

シェルター内部からの眺め

これは入り口に吊り下げて
あった登頂記録簿です。
あとちょいで氷原到着という時にシェルターがありました。ブリザードに見舞われた時に遭難を回避するための場所です。とてもいい場所でここからの眺めは最高でした。入り口に登頂記録簿がありましたので
一応、記念に凡人の名を歴史の一ページとして刻んでおきました。
と、シェルターを後にして先にすすみます。
いよいよ荒々しいその大地のあちこちを氷河の末端が顔を出していてトレイル(赤旗案内してありました)はその上をガイドしていきます。
実際にはこれは氷河ではありませんが、一応タッチ。氷河は本当に氷でできていますが、これは単なる雪が寒さで硬くなっただけのものです。これも長い年月かけて氷河ってことになるのだろうか?凡人には分かりません。と、こういった場所を歩きながら時に滑って尻もち(この動画の一番最後でひっくり返って尻もちついています。笑。分かりますか?)つきました。

痛かった。。。
ゴオ、ゴオオオオオ



と、途中、自分が歩く横にある穴から水の流れる音が地鳴りをあげて響いてきました。物凄く怖かった。。。自分の歩いている雪の塊は間違いなくやはり溶けてます。そしてこの歩いている雪の塊の下にはかなり大きな川があるに違いないのです。でも、その川は見えません。雪の塊は超巨大で分厚いので歩いても平気なのですが...

想像できますか?自分の歩く雪面が下に隠れた川の音で振動するんですよ?クレバスが隠れていたら、こりゃ、一発でお陀仏ですヨ、本当に。よくもまあ、こんな場所をトレイルとしたもんだ、とビクビクしてしまいました。でも考えてみりゃ、こういうスリルが凡人をこの手の突貫工事の旅に誘っているのです。それは間違いないと思います。自分の判断だけでなら、ここで怖くて引き換えしていたと思うのですが、National Park Serviceのやっていることだから間違いないのだろう、というどこかそういう気持ちが自分をいつも先にすすませるのです。
ちょいと進むと、それよりも遥かに遥かに巨大な氷の穴がありました。半円状ですが、これはメッチャでっかい。半円の半径は30mくらいあります。そしてここからは更に凄まじい

グオゴオオオオ


という見えない川の音が響いていました。その音がなんとも怖いこと怖いこと。
トレイルも佳境に入ってきます。氷河で100万年かけて削られてきた
ボロボロの石の集積からなる大地を踏みしめて先にすすむと
その先には無限の氷の大地が見渡す限り広がっていました。

これがHarding氷原です。
    これが地球か...
12キロ歩いて来てよかった... とそう感じました。自分の世界がまたひとつ広がったような、そんな妙な満足感を手にできたのです。

PS. 着ているジャケットはWalmartで16ドルで叩き売りされているものでした。さすが、アラスカ。防寒衣類はメッチャ安い。



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