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アラスカ旅行、残すところ2日、その時点で
『何処に行こうかなぁ?』
そう考えていました。当初、デナリ国立公園で大半の時間を過ごす予定でしたが、火災からの煙で見通しがきかなかったため予定を大幅に変更したのです。
アラスカにはタイガ(針葉樹)の森、ツンドラ(苔)の大地が大変多いのですが、これはタイガの森です。写真辺りはアスペンツリーが多く黄色くなり始めた頃です。 |
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と、そうこう考えているうちにアンカレジ東にレンタカーで走り始めました。天気が比較的よさそうで、かつ風向きが煙の問題という点では都合よさそうだったので景色の見通しも少しはつくだろうと思ったからです。3時間走ると大きな湖が見えてきました。本来、煙の影響がなければこの向こうには延々と山が並んでいるはずの場所です。
『くそー、ここまで来ても煙に悩まされるのか...』
今回の旅は天気がいいのにアラスカ北部の森の火災から生じる大量の煙にホント悩まされ続けました。 |
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ま、とりあえず、先に進みます。進めばなんかあるじゃろ、そんな気持ちでした。 |
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と、目的の場所に入りました。場所はWrangell-St.
Elias National Park(ランゲル・セントエライアス国立公園)です。この公園、実に広大で日本の四国よりも大きいのです。国立公園としては世界最大で、世界遺産にも登録されてます。 |
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公園が広くて園内に入ってもまっすぐの道が延々と続きました。本当に延々と。 |
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園内に入ってから2時間走っても全く目的地に到着できませんでした。日が暮れる... |
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と、そうこうするうちに真っ暗になってしまいました。本当に電灯も何もない場所で真っ暗になってしまい、暗くて道の見通しが利かないため運転しても距離が稼げないと判断。どっか道端でもいいのでテント泊しようと考えました。どうせ車も何も来やしないし。
が、真っ暗闇の中、ラッキーにもキャンプサイトを発見!そこにテント張りました。流石にもういい加減慣れてきていたので真っ暗でもテントはって寝るまで15分ほど。かなり寒かったのですが運転と、これまでの長いBackpack生活の連続で流石に疲れてたので、アッという間に眠ってしまいました。
思えば、かつてはテント張るだけで30分以上、さらに寝付くまでに1時間以上かかっていたのに...凡人も成長してはいるようです。というより少々のことは何とも思わなくなるくらい無神経になっただけか?笑 |
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翌日、寒くて目が覚めました。シュラフ(寝袋)は氷点下10℃くらいまでいける奴だったのですが、隙間から入ってくる空気が体を冷やすのです。8月と言うのに朝方は5℃くらい、避暑地もここまでいくとちょっと行き過ぎです。薪を燃やして暖をとろうと考えました。 |
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が、寒いのと朝露が降りて薪が湿っているのとで何ぼ燃やしても火はなかなか立たず煙が出るばっかし。
『ゲホゲホ。煙吸ってしもた...』
チャッカーは持ってきていないし、かといってホワイトガスを少しかけてからそれにつけてみてもいいのですが、以前、それをやって爆発状態を経験したのでそれもやめることに... 無念... 結局、凡人は凡人、火作れなかった... しょんぼり.... 朝の寒さが身にしみる。
【教訓】薪は乾いてない場合、チャッカー等がないと火を得るのは簡単ではない。
仕方なく、寒い中、ガスストーブで湯を沸かして朝食準備。 |
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この日、前日の疲れ、それからアラスカ旅行最終日で時間が限られている、という問題もあって一番の手抜き料理にしました。ドライフードです。湯を沸かして、計量カップ2杯分くらいのお湯を入れて待つだけ。10分間。簡易の食事が完成するのです。
これはストロガノフ風ホワイトソース・パスタなのですが...辛い...チーズくさい...大体いつもドライフード作るとこうです。美味しくはない。ま、でもBackpack生活ではカロリーを十分とっておくことは鉄則。この点ではドライフードは優れていますから、『不味い...』とは思っても、いっぺんに箸でかきこんでペロリと平らげてしまうのです。
ちなみにこのドライフードは外のビニールが皿替わりの役目を果たす優れもの。
Leave no trace. を簡単に実現できます。 |
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と、朝早くからパッと食事済ませ更に奥地へ進みます。寒いので朝靄かかる風情ある光景に |
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ドライブしながら目を見張り |
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それでも先へと急ぐのです。世界遺産か、さすがにそれなりに綺麗だな... ま、それなり程度のもんですが... |
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と、舗装道路が終了しました。といって、目的地はまだ100`ほど先。ここからは延々と未舗装道路が続くのです。山の中を延々砂利道ドライブ、かなり疲れる最後の試練です。 |
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この道路が実にやりっぱなしの道路で途中途中、横の崖からの落石があったり、所によっては道路脇の崖が一部壊れて落ちていたりで危ないのです。。。ポンコツ、レンタカーでしたから途中、何回か先に進むことを躊躇したりしました。でも、ここで引き下がったら一生後悔するに違いない!と心を鬼にして先へと進みました。砂利道ではもちろん自動車保険なんかききません。 |
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内心、かつてBad Landで砂利道でスピードをだしすぎハンドルがきかなくなってスリップ、路肩に滑り出したのを思い出すとスピードも出せないのです。場所が場所で(例えば写真のようなとこで)あれば死ぬハズです。自分とレンタカー、未舗装道路だけの世界、人なんかこの場所にはいませんから、ことが起こればヒジョーにまずいのです。凡人の中の凡人は時速30-40キロ程で日和りまくってトロトロと運転しました。
写真はとても変な景色ですが、これは氷河から流れ出す川の特徴です。アラスカにはこういう風な、浅い濁流で、くにゃくにゃ曲がった、しかも分岐の非常に多い川が沢山あります。パッと見の印象はとても異様です。この先にきっと氷河があるのでしょうし、またこの川の辺りはその昔、氷河の底だったはずなのです。 |
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とまあ、こんな雰囲気の未舗装道路をチンタラと進みました。
ゴトゴト、ゴゴッゴッゴッ、ガン、ブォーーン
という感じでぇ。この状態で3時間ほど。なかなかのストレスです♪本当にポンコツなレンタカーでしたから、中まで砂埃が入ってきて大変でした。室内も砂だらけになるんですヨ。いや参った。。。
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途中、かなりの高度の橋があったりもします。景色はいいのですが、橋はどれもとても幅が狭く車一台がやっと通れるだけの幅しかありません。対向車とはすれ違えないのです。ま、もっともこんな辺鄙な場所に自分のように車で来る物好きなんか殆ど皆無ですから、対向車が来る方が奇跡的なのですが... |
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少しづつ少しづつ高度が上がるにつれて気温も下がり、紅葉(黄葉が適切か?)も一層その深さを増します。
余談ですが、ちなみに紅葉は英語でFall Colorです。アメリカで紅葉を見に行きたいのであればFall
Colorで検索かけると、いい場所、Bestの時期が判りますヨ。
ゴゴゴ、ゴッゴッゴッ、ゴガン、ブゥゥーン |
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と調子乗って走っていると途中、道端にはこんな破片が... おーコワィ 明日は我が身か...と気が気でないですが、再度速度を落として
チンタラ、チンタラ、スタコラサッサ、ガン!!と先へ進みました。 |
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途中、深い森も少しありましたが |
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驚いたことに、こんなに辺鄙な場所に鉄道の高架橋があるではありませんか!なんでまた??と不思議でたまりませんでした。こんな場所になぜ?!?
とよく見ると、高架橋は(左の写真先のほうのように)傾き、一部完全に崩れてます。
『なんだこりゃ?お化け屋敷の一環か?』
とそんな気すらするくらい、何もないこの場所では気味が悪いのです。
後でわかりましたが、これはかつてこの先で銅鉱が大量に掘られたいた時に使用されていたものだったのです。というか、この先に銅鉱が見つかったからこそ、自分が走っているこの未舗装道路が、こうして今も残っているのだと判りました。(人との欲っちゃあ、すごいパワーです。) |
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またある場所には、道路わきに意味不明な幅20M、長さ300Mくらいの平たい土地がありました。何かな?と思っていたところ、これはプロペラ飛行機の離着陸用の滑走路、いわゆる空港でした。これ、今も使われているそうです。この辺って余りにも辺鄙すぎて、ここの人たちって、車じゃ、ラチがあかない為にプロペラ機を当たり前のように使う訳です。ちょっと、広い場所、たとえばツンドラの大地とか、広い湖があればそこはもう彼らの恰好の滑走路になってしまうわけです。彼らの車は飛行機なのです。 |
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とまあ、どんどん進むと山が自分を取り囲み始めました。
これは今回の我がポンコツ・レンタカーです。これは今まで自分が経験した物の中で最もポンコツなレンタカーでした。逆に、これなら未舗装で車を潰して(未舗装道路で自動車保険はきかないので)自分で弁償することになっても大したことはない、と確信できたので先に進めた点はよかったかなぁ。 |
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ちなみにこの辺の山、実に高いんです。Wrangell-St.
Elias国立公園には4000mを越える山が連なってます。実際に目の前の全ての山が4000m超えてるんです。この場所、5000mを超える西のWrangell山、東のSaint
Elias山の双璧以外にも実に10個近い4000mクラスの山があって北アメリカの高い山16傑のうち9個がこの一帯にあるのです。今年のアラスカは本当にDryで暑かったのでSnow
Cappedではなかったですが、例年はこの辺の山はこの時期でも雪をかぶってます。 |
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とまあ、こんな感じで辺りは、山々山々山
例えばロッキーと比べるとコッチの山は、すべて氷河で削られたものであるが為に、より急峻でその表面は荒々しく山〜山という感じでそびえたっているんです。(スンマセン、表現力なくって上手く言い表せんです) |
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山と湖とツンドラ、針葉樹に青い空。
これが地球の姿です。手つかずの自然は自分には実に心地よいものでした。景色のいいのもあって途中、車をとめてボンヤリと眺めてしまったりしてしまいました。本当のWindernessですヨ。こりゃ。時間あればドレかに登りたかった。といっても急峻すぎてGuideを雇ってピッケルとか準備しないと危険すぎだけどね。 |
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ホントに 『ワァー』 とポカーンと口あけて眺めてしもたです。ハイ。 |
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と思っていると、その先に、ななな、なんと人の住む気配が!
?マークの示すようにこれは観光案内所とそれを中心とした村(一件家)でした。
地図でみる最奥地McCathyなのでしょう。
その周囲を遠くWrangell-St.Eliasの山々が取り囲み加えて山間には氷河が顔を覗かせています。こりゃ、景色はとてつもない場所でした。(この周囲の雄大な光景は広大すぎて写真では表現できません) |
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その観光案内所の前にはバスが一台あり、犬が3匹昼寝していました。なんとも気だるいアラスカの昼下がりでした。ここが目的の終点なのでしょう。 |
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と、そこにいた人に声をかけると、小さい女の子が
『10ドルです!』
と言います。はあ?と思いましたがおばさんにきくと、ここはMcCathyではなく、このちょいと先にMcCathyの村、更にその先のKennecottという村があり、そこへ行くためにはバスを使うのがよさそうだと言うことが判りました。10j払うと
『どうもありがとうございます!バスは川の向こうです』
と、同じ女の子がいいます。会計は横の男の子の仕事のようです。どうやら、ここで観光客にバスの案内等をやっているのは、目の前の小さな子供達の仕事のようでした。 |
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女の子に
『Copper mine に行きますか?』
ときかれました。聞けばこの先、最終地点には銅鉱採掘とそれの精錬所があるそうなのです。
『信じられん...』
電気も水道もないんだぞ...人の生きる道はバックパックしかないのではないか?と思わせるこの場所に銅鉱精錬所が?とりあえず見てみることにしました。
『20ダラーズ』
また、女の子がいいます。20j払って、いろいろ話すとこの3人の方々、この場所McCathyで生まれ育って来た方々でした。涙でてきそうでした... この人たちの素朴な素朴な生活ぶりに... この場所には当然ですが学校なんてものはありませんし、それどころかおおよそ普通に考えて普通に人が生きていくのに最低必要とするであろう、電気、浄化された水もないはずですから...(実際には電気はこのちょっと先のMcCathyのホテル群だけにはあるそうでした。Generatorによるのです。水は自己浄化。)
アメリカの多様性というのは凄い... この子達は人ごみなんか知らず、周囲の4000m越える雪をかぶった山々、そして氷河、川といったそういうものが自分にとっての世界であり、そこで立派に優しく成長していくのです。今でも例えばアメリカ本土のNorth
Dakotaのような辺鄙な場所(隣の家まで3キロ以上とかはザラだそうです)は、余りにも辺鄙なために子供たちが行くべき学校が近くにはありません。家にいる、お父さん、お母さんが学校の先生であり、それがその人たちの世界、その人たちの共和国なのです。日本で見てきた世界と言うのは、世界共通ではありません。 |
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ここはとてつもなく辺鄙な場所です。例えばもちろん電力なんてありません。が、驚いたことに電話機がありました!太陽電池駆動式の衛星電話(写真左)です。最先端なのか原始的なのか...
そしてその横には川を渡る吊り橋が、いや、たった一本のワイアー(写真右)があります。
『はあ?このワイヤーで川わたれっっちゅうのかァ?』
と思っていたらこれは歴史的建築物でした。これは数十年前まで使われていたレッキとした橋でした。これに大きな袋状の物吊り下げてそれで移動するのです。川の水はこの左手の氷河に源と発し、冬は大量の雪がこの辺りを覆うため橋を作るのが極めて困難なのです。 |
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『Over There』
女の子の指差す方を見ると橋がありました。鉄筋コンクリートと鉄のネットではできてますが、冬場いつ壊れてもまたすぐに作り直すのでしょう。 |
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この橋がまたぐ川はこの通り、濁流も濁流です。典型的氷河からの水です。Wrangell
St. Elias公園には4000mを超える峰々、そしてそれに抱かれた無数の氷河があります。その氷河群こそこの場所が世界遺産に登録されたゆえんだと思います。ここの氷河は世界最大級の奴がいくつも、いくつもあるのです。その氷河は大地を休むことなく絶え間なく削ります。その証拠がこの川の色です。 |
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川越しには雪をかぶった山、そこを長い時間かけて流れ落ちる氷河が目に入ります。川岸にはバックパッカーがキャンプ張っていました。いい場所だ。自分も昨日がんばってここまでこれればよかった...かなり後悔しましたがなんせ時間がなかった。時間があればこの場所をベースに登るべき山、超えるべき氷河は沢山あります。そういう世界に歩くための道などは何処にもありません。自分の踏み出す一歩が道を作る第一歩です。きっとそこへのJourneyは異次元世界へのTripのはずです。 |
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川を渡ってバスにのりました。装甲車のような、たくましい奴です。砂利道は非常に狭く、道中ゆれるゆれる。ほどなくMcCathyの村、本体に入りました。凄い、数件の宿泊施設、お土産やさんです。ここは既に銅鉱は掘りつくし今では経済、産業等の確たるものはなくは観光によるしかないのです。この場所は銅鉱で最盛期をむかえ発展し、それが途切れた時に他と同じようにゴーストタウン化の道を歩んだはずです。そこを守ったのがこの場所の国立公園化、それに続く山登り、Backpackerの氷河ガイド、遊覧飛行機を中心とした観光産業なのだと思います。でなければ人って便利な世界に流れていってしまいますから... |
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最奥地のKennecottに到着。バスを降りて登山ガイドのプロの店を横目に道を進むと左手は妙に平らだけど細かな比較的規則正しい起伏の連続する台地が広がっていました。なんじゃろか?これは?と思いましたが |
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これ大量の砂、土をかぶったKennicott Glacier、氷河だったのです。氷河は白いものと思っていましたがこんな奴もあるんですね。幅は3キロくらい、長さは数10キロあります。かなり巨大です。そういえば確かに妙に寒い。 |
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と、その先に銅鉱精錬所がありました。
威容(異様?)です。
何もないこの場所にそびえたつ建物。今では銅は掘っておらずこの建物は単なる残骸です。人はこんな生きていくのも厳しい世界でも銅=お金の欲望に駆られて、この世界に身を投じて来たわけです。今は夏ですが、冬、それはそれは雪があたりを覆う寒い寒い世界のはずです。そこに、よくもまあこんな建物を作ったもんです。 |
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と、その建物脇のトレイルを進みます。国立公園としては雰囲気が他と異なりますが、これらも園内なのです。 |
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歩き出した先には |
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そびえる峰々とそこを覆う紅葉が広がっていました。黄色いアスペンツリーや |
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真っ赤な地衣類 |
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そして何よりアラスカを含めた北の台地を象徴するかのごとく真っ赤に燃えていたのが、このFire
weedです。 |
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と、トレイルを進みます。 |
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途中、だだっ広い盆地上の世界の先に氷河が真っ白く見え始めたかと思っていると |
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どんどん見晴らしがよくなってきました。 |
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山は氷原を抱き白き峰が青い空に浮かび上がるかのようにそびえ立ってました。 |
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写真はこの国立公園の東の雄Mount Wrangellです。この写真のように雲をかぶっていることが比較的多い山だそうです。
Mount St. Eliasは公園内で最も高い山ですが遥か遥か東に位置しています。(それぞれのピークは帰りの飛行機から眺めることが出来ました。リンク先、それから、このページの頭の写真のとおりです。)
時間があればガイドを雇って一つ登りたかった... ガイドを雇った場合、アイゼンもピッケルも食事も全て彼らが必要な準備をしてくれるので自分で登山用のプロ仕様の準備の必要はないのです。でも、残念なのはもう帰り始めなければ飛行機に間に合わないということです。アンカレジまで運転は恐らく7時間はかかりますから。残念ですが帰宅の途につきました。
どれかに登ってみたかった。雪山と言うのはどうも美しくて魅了されます。登ってみたいと...
『怪しい美しさってのは何でもそうだけど危険だよな。』 |
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帰りの飛行機からは恐らくWrangell山脈の中の一つの氷河だと思いますが見事なやつが目に入りました。ホンモンだよ。これって。当たり前だけど氷河だ。自分は今回の旅行で一つだけ(別の場所の)氷河の上に立ちました(後ほど紹介)が、こいつはそれよりも桁外れにデッカイ。
ああ、いい旅でした。この旅、なんだか、ああ...初めて地球に出会った...と、そういう感じがジワジワするような。本当に。 |
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地球って美しい! |